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むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに

理科室を「研究室」に

 先日読んだ苫野一徳氏の「教育の力」の中で、ジョン・デューイがシカゴ実験室学校の実践にふさわしい机や椅子を探したが、結局自分が求めるものを何一つ手に入れることができなかった、というエピソードが載っている。その店主が言った、「ここにあるものはどれもこれも、先生の話を聴くためにあるものばかりです」という言葉にデューイは衝撃を受け、これこそまさに伝統的な学校教育を象徴するものだと痛感したという。

 

 確かに現在の日本でも、普通教室にある机の多くは、個人かつ座学で学習をすすめることに特化されたものだと言える。その証拠に、4人班をつくるために机をくっつけると、高さがバラバラのため非常に作業がしにくい(もちろん、これはこれで個人の体格に合わせることができるというメリットは大きい)。また、仮に高さが揃っていたとしても、4人が一緒に作業をするにはあまりにも狭い(実際に普通教室で『学び合い』をすると、個人の机では前述したような問題があるからか、毎回決まって教室後方の長細いロッカーの上を使う生徒の集団がいる)。

 

 その点、理科という教科には理科室という優れた学習スペースがある。アクティブ・ラーニングや『学び合い』といった協同型の学習形態において、理科室の持つメリットはたくさんある。

 

個人机ではなく、大きな作業スペースを持つ机がある

 思い返せば新採用の頃は、理科室特有の「お互いが向かい合う座席配置」や「個別に分かれていない机」が、いわゆる「全員に前を向かせてノートを書かせる」ことを困難にさせているように感じ、極力理科室は使わなかった時期もあった。しかし、考えてみれば、それは一斉授業においては障壁になりうるだけであって、アクティブ・ラーニングや『学び合い』であれば、気にならないどころかむしろ強みになることに気付いた。しかも、理科室は昔ながらの40人学級に対応している場合が多いので、今のように1クラスの人数が減ったことで、後方にフリーの机がいくつかある場合が多い。そこを使い勝手のよい作業スペースにすることができる。

 また、普通教室よりも絶対的に広いので、机と机の間などに「遊び」のスペースが確保できることも大きい。「遊び」のスペースがあることで、生徒間の交流がしやすくなるのだ。

 

観察・実験器具が豊富にある

 理科室の何よりの強みは、いつでも観察・実験ができるところにある。必要であれば同じことを何回したっていいし、応用的な取り組みをしたって構わない。教師が安全上守らせなければならないルールを設定するなどの一定のシステムさえ敷いてしまえば、後は生徒が自由に学ぶことができる。

 

普通教室から離れている

 理科室は普通教室とは別の校舎やフロアにあることが多いので、多少音が出たり臭いが発生したりといった作業を行いやすい。また、生徒が立ち歩いたり話し合いをしたりしても、隣のクラスに迷惑がかかる…といったことは起こりにくい。

 

 最終的には、生徒にとって理科室が「研究室」的な存在になることを目標に、日々の実践のレベルを高めていきたい。