「困難な成熟」内田樹
教えるときに必要なものは「おせっかい」と「忍耐力」なのです。この二つの気質は、よく考えると相反するものです。
(中略)
たいへんです。まったく背馳する二つの能力を同時に発揮しなくちゃならないんですから。
でも、これは僕が35年間「教える」という仕事をしてきた経験から申し上げられることです。
この二つの傾向のうちに「引き裂かれてある」こと。
それが「教える」という仕事が人間に求めることです。
これを受け容れることのできる人が「教える資格」のある人です。
それ以外には「教える」ためのノウハウも、秘訣も存在しません。
以上が、「人にものを教える」立場に今ある方に僕から申し上げたいことです。
教師という仕事は、矛盾すること、相反することを伝え続ける仕事だと思う。「勉強しろ」と言いつつ「勉強だけがすべてじゃないよ」と言ってみたり。「素直が一番」といいつつ「嘘も方便」と言ってみたり。「それじゃあ子どもたちが迷うじゃないか!」と言われるかも知れないが、迷えばいいのだと思う。その迷いなくして「成熟」はないのだから。
そんな矛盾に「引き裂かれてある」状態であっても(あってこそ)、幸せに生きていることを体現できる=いつも笑っていられる教師こそ、「成熟」のモデルとなり得るということかな。
教師にとって最も必要な資質……。それは「いつも笑っていること」です。これを基準に自分の教師生活を振り返ってみることが必要です。そうするとすべきことが見えてきて、すべきでないことも見えてきます。やらなければならないことが見えてきて、やりたいことの優先順位も見えてくるようになります。
— 堀 裕嗣 (@kotonoha1966) August 25, 2015